過去にはマンガ大賞やこのマンガがすごいにも選ばれた注目された作品の映画化。
作品全体の印象
最近では「ちはやふる」「バクマン」もその傾向にある作品だったが、こういう作品は発巻数も多いので仕方ないと思っていた。そういう意味では、3月のライオンは現時点で13巻だから、多少、急ぎめのまとめにすれば、カットされる部分も少なくファンにとっても優しい作品になるのかと思っていた。
ふたを開けてみると、やはり総集編。原作通りのストーリー展開ではなく、主人公の桐山くんの新人王獲得が早期になっている(島田8段の話より前)ほか、大人になってからの師匠・島田8段との1対1でのコミュニケーションやライバルの二階堂の描写は最低限に収められている。川本家についても最低限で、ひなちゃんが恋していた野球少年やこのマンガの特色のひとつであるお料理紹介シーンはほぼカットである。
マンガとの違い
前編では桐山くんの背景・キャラクターの説明をしながらその表現として「とにかく走る」シーンが度々使われていた。実際、原作でもしょっちゅう走っている桐山くんなので、この辺の違和感はないが、リアルになると「こいついつも走ってんな」という気持ちが高まるのが面白い。
原作と大きく違うのが、モノローグを極端に省いた点とモノローグのためのイメージ描写を省いているところだ。マンガではしばしば棋士たちの思考表現に多様なイメージを繰り出すことによって読ませる。新人戦における山崎5段が桐山・二階堂への敗北感を表現する際には、つまずきを感じ、次の一歩を踏み出せない山崎と対照的に抵抗なく深い、深い穴に飛び込んでいる二人が描かれた。
前編のテーマは「主人公・桐山」
3月のライオンに出てくる子どもたちの多くが一般的な境遇を持たない家庭に育っている。
●両親妹を亡くし、別家庭に入ることで育ってきた主人公
●難病を患うライバル
●母親を亡くし、父親が逃亡した3姉妹
さまざまな課題に直面するこのタイトルの大きなテーマだが、その点において、前編では桐山くんにフォーカスがあてられた。
語らない主人公・桐山は映画が進むにつれ、言葉数が多くなっていく。この表現は、ひとりの子どもが居場所を見つけ意欲を取り戻す姿としても秀逸である。(序盤、心の声として表現されたモノローグを排除したのはこのためか?)
自己表現が許される場所・人と出会っていく中で新たな世界を切り開いていく。そのためにサポートをする大人もいれば、邪魔をする大人もいるが、多様な経験が彼を大人にしていくのである。将棋によって巻き起こる成長物語を是非観ていただきたい。
後編は川本家?
映画ラストにはこれまで後編告知の映像が流れる。川本家を取り巻く、いじめ・父親問題が主題となるようだ。というか、前編で主人公の話はだいたい終わっているので、もうひとつの主人公の話をしよう、、という感じだろうか。来月22日公開である。
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