引っ越し回顧録⑥「お別れがたりない」

引越しする部屋も決まった。

最低限生きて行くための家具も揃った(組み立て前)

口座もできたし、必要経費はなんとか初期金におさまった。

引っ越しも同棲も準備はとりあえず終わった。

かにみえた。


僕たちがやっていないこと。

それは今までお世話になってきた飲み屋とのお別れだった。

僕も彼女も埼玉の戸田に住んでいた。

別に栄えている訳でもない場所だけど、ボートコースのおかげで市政は潤っている。

税金もいろいろと安い、落ち着いた場所だ。

僕は生まれてからずっと、彼女はこちらで仕事を始めてから、

なんやかんやでここ3年くらいの思い出の5割くらいは戸田にある。

僕たちは毎週土曜日の夜、ほぼ必ずご飯を食べに行っていた。
多分、特に戸田駅にある飲み屋はほぼ全部行っているので、

居酒屋マスターといっても過言ではない。

そのなかで、最も通い続けた2店舗を紹介したい。

駅前にある、超万能店「みつる」

駅をでてすぐのところに店を構えている「みつる」

大きな特徴はなく、万能なお店だった。

焼き鳥をベースにおいているけれど、一切食べなくても十分に美味しいものがあるし、
夜が遅くなりがちな彼女にとって、ご飯をたべられる飲み屋は貴重だった。

食べログの星評価すらつかないお店だけどほぼ毎週満員だったと思う。

戸田を中心に居酒屋を構える株式会社ROTのお店の一つで、

戸田公園にあるRISA!RISA!や鳥家も美味しい系列店なのでぜひいってほしい。

ちなみにみつるの横にある磯野くんは海のない埼玉でうまい魚がでるいい店。

ただ、大勢で行った方が楽しくて、ほぼ2人で行ってたから結局一度しか行けなかった。

僕たちが通い始めたときからずっとバイトをしてた子いた。

大学生で、僕たちが引っ越すタイミングで、彼女も卒業で辞めることが決まっていたので、

最後にお別れを伝えるほどに仲良くなっていた。


もう一点は地元感のあるフレンチのお店。「Le copain」

ここも食べログの星評価すらついてない地元って感じのお店。

夫婦でやってらっしゃるのだけれど、シェフの旦那さんが出してくれるものは、

とっても温かくて、落ち着く。引っ越しの話の半分くらいはこの店で進んでいた。

奥様はピアノ教室をやられていて、ふとした瞬間にBGMが生音のピアノに変わる。

フレンチだからといって気取らない感じが大好きで、一番気に入っていたお店。
ワインが美味しくて、立川でも同じようにワインとご飯が美味しいお店を探している。

12月の最後に顔を出したときには、僕たちのためだけにピアノを弾いてくれた。

弾いてくれた曲が僕にとってたまたま思い出深い曲で、ズキンときてしまった。

また行きたいお店のひとつ。
結婚を決めるときはこのお店に行きたいと、こっそり思っている。


どっちも僕たちの思い出がたくさん詰まっているお店で、

素敵な気持ちにさせてくれる居場所。

いつか、顔を出したいという気持ちにさせてくれるのは後にも先にもこの2つだけ。

用事があったら行ってほしいお店だけれど、

用事すらないのが戸田という街。たりないのはきっと行く理由だけだ。

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